今回読んだ本は広木大地さん @hiroki_daichi の新刊です。Twitter で見かけたので、気になって読みました。
長くて読むのは大変でしたが、11 章で SECI(セキ)モデルと AI エージェントの関係性が明らかになってから、熱い展開になりました。
SECIモデル とは、野中郁次郎氏と竹内弘高氏によって提唱された、暗黙知と形式知の相互変換を通じて組織的知識を創造するプロセスを説明する理論モデルです。
広木さんの本を読んだのは『エンジニアリング組織論への招待 』以来で、SECIモデルを知ったのもこの本でした。前著ではエンジニアリングを「不確実性を削減する営み」と定義していましたが、本書ではその先にある AI エージェントとの協働について論じています。
本書では「しらせ君」という AI エージェントの実践例が紹介されています。ミーティング議事録の自動記録や要約など、組織の暗黙知を形式知に変換するプロセスを AI エージェントが担っています。SECIモデルの「表出化」を AI が支援するという視点が印象的でした。
今は Claude Code や Codex などで、人間がチャット形式でバイブコーディングすることが広まってきましたが、今後は構築した複数の AI エージェントをコラボレーションさせ、24 時間 365 日仕事をさせる方向に進化するのではないかと思いました。
人間の仕事は AI エージェントの構築が主になるのかもしれません。ソフトウェアエンジニアの仕事だけでなく、組織全体が再定義され、本当に時代が変わるのだろうなと感じました。
付録の「本書はどのようにつくられたか」にもすごいことが書かれています。是非読んでみてください。
ハイライトとメモ
以下、個人的なメモです。
しかし実際のところ、ソフトウェアの本質は文書管理にあります。複数の人が協働して同じ文章(コード)を管理し、版(バージョン)管理システムを通じて変更を追跡し、承認プロセスを経て統合していく様子は、まさに立法府や行政機関における文書管理プロセスと酷似しています。言い換えれば、ソフトウェアは 動作する書物 なのです。
面白い解釈。
人類が火を利用するようになったことは、私たちの身体機能の「外部化」の始まりを象徴しています。
こちらも面白い。もちろん AI も外部化。
ベテラン社員の頭の中にある「こういう場合はこう判断する」という経験則を、if文やアルゴリズムとして表現する。これこそが、現代のソフトウェア開発の本質なのです。 この関係性を最も端的に表現したのが、1968年にメルヴィン・コンウェイが提唱した「コンウェイの法則」です。
そういうことか・・・!
記録(SoR)、顧客接点(SoE)、洞察(SoI)
AIエージェントの登場によって可能になった第4の段階である知識創造(SoK:System of Knowledge Generation)という新しい概念を提示します。
「しらせ君」の実践例は、SECIモデルの理論的な枠組みが実際の業務において具体的な価値を生み出すことを示しています。
SECIモデルと AI が繋がるとは思わなかった。しかも n8n で。
ジョブクラフティングとは、働く人一人ひとりが主体的に仕事や職場の人間関係に変化を加えることで、与えられた職務から自らの仕事の経験を創り上げていくことです。
ジョブクラフティングは、3つの要素から成り立っています(図14.2)。
厚生労働省のサイトに『令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について- 』が公開されており、「第3節 「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について 」にジョブ・クラフティングのコラムがあった。
以下はそこからの引用。
- 作業クラフティング
- 仕事のやり方に対する工夫であり、仕事の中身がより充実したものになるよう、仕事の量や範囲を変化させる工夫である
- 人間関係クラフティング
- 周囲の人への働きかけの工夫であり、仕事で関係する人々との関わり方を調整することで、サポートや前向きなフィードバックをもらい、仕事への満足感を高める工夫である
- 認知クラフティング
- 仕事の捉え方や考え方に関する工夫であり、仕事の目的や意味を捉え直したり、自分の興味関心と結びつけて考えることで、やりがいを感じながら、前向きに仕事に取り組む工夫である
ジョブ・クラフティングは初めて知ったけど、私は割と意識して仕事していると思った。
AIエージェントが高度化し、より多くのタスクを代行できるようになればなるほど、人間のエージェンシー(主体性)はより重要になってきます。なぜなら、AIが「何をするか(What)」を実行できるようになった今、人間に求められるのは「なぜそれをするのか(Why)」「どのような価値を生み出すのか(Value)」を定義することだからです。
Why がより重要になってきた。Value への意識は低めだったので、改めていこう。
ソフトウェア開発における真のボトルネックは、もっと根源的な場所にあったのです。 それは「暗黙知」です。
これは本当にそう。Claude Code などでコードの意味はすぐ理解できるけど、その裏に潜んでいる暗黙知は実装者以外に分かり得ないことが多いと思う。
多くの組織でAI活用が「タスクの効率化」で止まってしまうのは、この暗黙知を拾い上げ、問いを立てるプロセスが不足しているからではないでしょうか。
そう思う。